2011年9月26日月曜日

聖霊は増殖する

緑の資本論8 聖霊は増殖する


この記事では、中沢新一著「緑の資本論-イスラームのために」を扱っています。
以下の目次に従って、順次その要約と感想を記事として掲載しています。

緑の資本論-イスラームのために 目次
一 一神教をめぐる認知論的レッスン
   1節【魔術的思考の時代】
   2節【一神教の成立】
二 利子(利潤)を否定するイスラーム
   1節【象徴界と現実界の一致】
   2節【利子の厳禁】
   3節【キリスト教のストッパー解除】
三 タウヒード貨幣論
   1節【資本主義とイスラーム経済の差異】
   2節【タウヒードの思考】
四 聖霊は増殖する
五 マルクスの「聖霊」
   1節【「三位一体」のドグマ】
   2節【一神教純正ドグマからの逸脱】
   3節【クリスマスとラマダーン】
エピローグ スークにて

(*印で区分されているところを節とし、小見出しは当方で付けました。)

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四 聖霊は増殖する
ア 要約
●キリスト教的西欧では「子を産出する神」、貨幣、無限の数学、資本主義、精神分裂病的文明。これらの聞には明らかに通底するものがある。

●初期キリスト教は「聖霊」もまた、「父」「子」と並んで、神の示す格(ペルソナ)の一つである、という考えを、ドグマとして確立した。

●トマス・アクイナスらによる「三位一体論」の構築で理論化(「父」は神の本質を源泉的、原初的に持つ。「子」は「父」から産出され知恵・言葉として生まれる。「聖霊」は「父」と「子」から発出される。)

●スコラ学者は「聖霊」の本質を贈与論と生命論の言葉で語っている。(産出が生殖や相続の過程に、発出が愛や意志の行為にあらわれる。前者は遺伝情報の保存のためであり、後者は他者に向かって自己の免疫機構を解除して開いていく、愛の行為の場合のような、生命論的過程に相当する。)

●「聖霊」は贈与として、賜物として実現する。贈与を動かしていくのは、他者に対する愛の心(熱望や欲望)である。愛と欲望が両義的であるように、贈与もまた両義的である。贈与も一瞬にして報酬目当ての「聖物売買的」行為に堕落していく危険性を常に抱えている。

●キリスト教:「父」が「子」を産出し、「聖霊」がそこから発出してくる「三位一体論」を一神教記号論のベースに設定して、その構造によって、資本主義ときわめて親和的である。

●イスラーム:一神教が実現しようとした「第一次形而上学革命」の精神に忠実であろうとして、至高純粋の一神教の形態をタウヒードによって実現しようとしたイスラームは、その構造によって、資本主義とは異質な経済システムを生みだし、発達させていくことになるだろう。(イスラームのキリスト教批判は、資本主義(社会主義も含む)に対する批判となる宿命。)

イ 感想
●これまで不確かだった三位一体論の内容について理解することができました。

●聖霊は贈与として実現するが、贈与を動かしているのは愛であり、愛は両義的であり、だから贈与も報酬目当て行為に堕落する危険を抱えている。という記述に興味が湧きます。直感的に理解できます。

●聖霊とは人が普遍的に備えている思考パーツの一つであると思います。それをキリスト教は原理に取り入れてしまってので、結果世俗的に堕落した。という風に、とりあえず素人理解しておきます。

●イスラームから見るとキリスト教が一神教としての純粋性を失っているという風に写り、経済の落差を考えると、近親だからこそ、一層憎悪するみたいな感情になっている面がある。という風に9.11の背景として感じます。

(つづく)

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