緑の資本論5 キリスト教のストッパー解除
この記事では、中沢新一著「緑の資本論-イスラームのために」を扱っています。
以下の目次に従って、順次その要約と感想を記事として掲載しています。
緑の資本論-イスラームのために 目次
一 一神教をめぐる認知論的レッスン
1節【魔術的思考の時代】
2節【一神教の成立】
二 利子(利潤)を否定するイスラーム
1節【象徴界と現実界の一致】
2節【利子の厳禁】
3節【キリスト教のストッパー解除】
三 タウヒード貨幣論
1節【資本主義とイスラーム経済の差異】
2節【タウヒードの思考】
四 聖霊は増殖する
五 マルクスの「聖霊」
1節【「三位一体」のドグマ】
2節【一神教純正ドグマからの逸脱】
3節【クリスマスとラマダーン】
エピローグ スークにて
(*印で区分されているところを節とし、小見出しは当方で付けました。)
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二 利子(利潤)を否定するイスラーム
3節【キリスト教のストッパー解除】
ア 要約
●キリスト教世界でも利子の否定は、原理的には事情は同じはずだった。(旧約聖書には高利を否定する記述がある。)
●12世紀ヨーロッパではウスラ(高利)を教会が禁止しようとして大論争が繰り広げられた。
●神学者の「ウスラ反対」の論陣は、イスラームが一神教的記号論で武装した徹底的「反自然主義の思考」により対抗したようなものではなく、「金は金を生まず」という「自然主義的な認識」によって対抗しようとした。
●ウスラとの戦いで、結局教会は勝利できなかった。
●スコラ学者の論調は、高利一般を断罪するのではなく、いったいどの範囲の利子付き金融なら許されて、どのあたりを超えるともはや許されなくなるかという、「公正」の理論を練り上げることに、彼らの関心が移ってきたのである
●もう一つ重要な点は、この時代に「煉獄」の概念がつくられたことだ。(天国と地獄の中間に、生前の罪を浄化して天国への門をくぐっていける資格を得る、煉獄と呼ばれる新たな緩衝地帯が設定された。これによって、高利貸たちに重くのしかかっていた心理的負担は、大いに軽減されることになった。)
●13世紀に、資本主義の草分けである未来型の商人、高利貸したちにはめられていた足かせが、「公正」の理論と「煉獄」の思想ではずされた。
●キリスト教はこのとき、資本主義に対するストッパーをおそるおそる解除しはじめたのである。
イ 感想
●同じ一神教でありながら、イスラームは徹底した一神教記号論で武装し、キリスト教は「自然的な認識」で対抗しようとしたという差異の原因について興味が湧きます。
●「公正」の理論と「煉獄」の思想で資本主義のストッパーが外されたという、マクロな視点から歴史を捉え、ポイントを単純明快に表現する論調がとてもわかりやすく感じます。
(つづく)
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