緑の資本論3 象徴界と現実界の一致
この記事では、中沢新一著「緑の資本論-イスラームのために」を扱っています。
以下の目次に従って、順次その要約と感想を記事として掲載しています。
緑の資本論-イスラームのために 目次
一 一神教をめぐる認知論的レッスン
1節【魔術的思考の時代】
2節【一神教の成立】
二 利子(利潤)を否定するイスラーム
1節【象徴界と現実界の一致】
2節【利子の厳禁】
3節【キリスト教のストッパー解除】
三 タウヒード貨幣論
1節【資本主義とイスラーム経済の差異】
2節【タウヒードの思考】
四 聖霊は増殖する
五 マルクスの「聖霊」
1節【「三位一体」のドグマ】
2節【一神教純正ドグマからの逸脱】
3節【クリスマスとラマダーン】
エピローグ スークにて
(*印で区分されているところを節とし、小見出しは当方で付けました。)
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二 利子(利潤)を否定するイスラーム
1節【象徴界と現実界の一致】
ア 要約
●一神教の原理では、象徴界(神のロゴス)と現実界は一体でなければならない。(「わたしはある。わたしはあるという者だ。」律法の書 神が自らを「ある」(現実)と呼んでいる。)
●神のロゴスに似せたものが言葉であり記号である、それは象徴界と現実界を可能な限り直接的に結び合わせるものでなければならない。
●一神教は想像界の働きに警戒的である。想像界の働きが現実界と結びついて肥大化すると、農耕社会の偶像崇拝が発生してくる。
●偶像崇拝者は象徴界と現実界の直接的な一体状態を耐え抜いて、神のロゴスを生きることができない。
●偶像崇拝的な社会は自由であることやたくさん増殖することに、大きな価値を置いてきた。そのためにそこでは、象徴界(神のロゴスであり父のロゴスであるもの)の権能を奪って、快感原則的な想像界の働きをべースにする社会を構成しようとしてきた。
●現代を特徴づける資本主義と精神分裂病という、象徴界の権能の剥奪から生ずる事態は、まさに一神教の民の間に発生し、またたくまに地球大の規模に拡大していったものだが、ただイスラームだけがこの事態を病気として診断し、一神教の思考に従うわれわれは、象徴界と現実界の直接的一致の原理を守るべきではないのか、と他の一神教の民に呼びかけていたのである。
イ 感想
●これまでの読書から、窮屈な一神教を巧みに修正したキリスト教から資本主義が発生して、様々な現代社会の問題を発生させていると理解してきました。そうした理解から、この節で述べられていることはよく理解できます。
●イスラーム(原理主義)が、一神教の大切なところを修正して繁栄しているキリスト教世界(西欧世界)を憎悪しているという図式が、この節の説明で思想面から首肯できます。
●最後の文章に「精神分裂病」がでて来るので、前後の文章にその説明が無いので、唐突感があります。
(つづく)
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