2011年5月18日水曜日

ジオパークとは(転載)


 岩井國臣先生の「ジオパークについて」の「14章ジオパークとは」は著者のジオパークについての具体的イメージが箇条書きで、判りやすく表現されていますので、この欄にも転載させていただきます。

14、ジオパークとは?

* ジオパークとは、地域の人々が自ら作る公園であり、観光を強く意識して官民が協力して地域全体を整備するものである。

* その場合のコンセプトは、ジオ(地球)であり、地域の共通感覚は、国内の他地域との繋がり、東アジアとの繋がり、アメリカとの繋がり、太平洋諸島との繋がり、世界との繋がり、さらには宇宙との繋がりを強く意識した・・・・ 地球的感覚である。

* それらの繋がりは、関係と言い換えてもいいが、地質学的見地、地理学的見地、生態系学的見地、歴史学的見地、文化的見地から学問的、専門的に検討される。

* したがって、ジオパークは、地質公園と呼んでもいいし、地理公園と呼んでもいいし、生態系公園と呼んでもいいし、歴史公園と呼んでもいいし、文化公園と呼んでもいいが、それらを総称して地球公園と呼ぶこともできよう。

* そして、基本的に大事なことは、地理学者を始め専門家の力によって、その地域の観光資源、つまりその地域の光り輝くものとは何か、そのことが地域の人々に 十分理解されていなければならないことである。(注:地理学との関係は後日触れる。)

* 近年、地球学というまったく新しい学問が始まっているが、日本ジオパークは、それとのネットワークをつくることが望ましい。「地球学とは、フレームを地球にとり、テーマとしては人間圏に関することがらを新たな方法論を用いて論じる知的体系」・・・と言われている。

* 日本の「歴史と伝統・文化」の心髄が「違いを認める文化」にあり、そういう意味では、日本では歴史的に見て「平和の原理」が働いてきたといえる。それを 「平和の論理」として世界の人びとに語って行かなければならない。日本のジオパークは、そういうわが国における「違いを認める文化」というものをどのよう に世界の人々に説明していくか・という・・・・大変むつかしい課題に挑戦するものでもある。

*「違いを認める文化」を語る場所は当然歴史的遺産が中心になるが、その他新たな場所の演出にあたっては、その歴史的背景や伝統や文化が密かに感じられることが肝要だが、「和のスピリット」というものが強く意識されなければならない。「和のスピリット」の出現する聖なる空間というものは「宇宙との響き合い」のできる貴重な空間であるが、空、地質、水に関わる場所のほか、縄文遺跡は、そういう空間になるよううまく演出されることが望ましい。

* その上で、地域の人々は、自らの地域に誇りを持ちながら、自らの知見と感覚によって、観光客のためのインフラ整備をする。

* 日本のジオパークは、観光開発として整備するだけでなく、地域の人々の感性に強い影響を与える基本的な生活環境として整備されなければならない。風土もそうだが、環境というものは人々の感性に強い影響を与える。環境にはいろいろあって、地質学的な環境、地理的な環境、生態系的な環境、歴史的な環境、文化的な環境などがある。そういった環境がうまく整えられた「場所」では、人々の感性はそれなりに養われるし、それなりの学習も自ずとできる。門前の小僧習わぬ経を詠む・・・という訳だ。

* 地域の人々が自ら活動するもっとも基本的なものは、ソフト面ではお祭りその他の芸術文化活動であり、ハード面では地域の環境整備と手作りの案内板やベンチ などの利便施設の整備である。

* 地質学的な説明などの地球学的な説明は、ジオパークのもっとも根幹をなすものであるにもかかわらず、きわめて難しいので、インストラクターの活動が不可欠である。

* つまり、ジオパークは地域の人々が主役であり、インストラクターが脇役となる。民間企業と行政はそれらを支えるという役割分担となる。清水博の「場の思想」が言うように、地域の人びとは「メディオン」となって、一人一人の存在感を示しながら、舞台の上の即興劇をイキイキと演じなければなら ない。そして、地域の人びとがイキイキと存在感を示しながら生きていくためには、競争社会ではダメであって、市場経済の弊害を緩和しなければならない。そのためには、贈与経済の部分を増やしていく必要があり、ミヒャエル・エンデの言うところの「地域通貨」の普及が不可欠であると思われる。かかる観点から、 日本のジオパークは、そういう「地域通貨」という新しい課題に挑戦することが必要かもしれない。

* 民間企業は、博物館や宿泊施設などのサービス施設を整備するものとするが、その際、地域の光り輝くものが何か、その地域と他地域との繋がりはどうなっているか、芸術的に実感できるよう工夫されていなければならない。実感できるということは、理屈でなく感覚的に虎まえることができるという意味である。

*行政は、地域の人々と連携して、道路や河川の環境整備を行う。特に、遊歩道の整備に当たっては、地域の環境整備と手作りの案内板やベンチなどの利便施設の整備が不可欠である。

* ジオパークは,もちろんユネスコに支援された世界ジオパークから,国立レベルのもの,都道府県レベルのものもあって良いし,市町村レベルのもの,地区レベルのもの或はポケットパーク的なものもあっても良い。

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