ずっと前に読んだ河合隼雄の「働きざかりの心理学」という本に、次のような面白いことが書いてあります。
新入社員が入社早々病気をしたり、大失敗をしたり、喧嘩をしたり、一見マイナスの現象を起こすことがよくあります。この説明として、人間が根本的に自分の在り方を変えねばならぬことは大変なことなので、それにふさわしい劇的なことが、なんらかの意味で必要なのであると話しています。そして、変革に伴うエネルギーは、一般にマイナスの形をとって現れることが多く、入社早々の失敗などは、プラスの意味を持つ「入社式」になっている場合が多いと話しています。
「ジオパークについて」を学び出して、自分なりにこのような「入社式」を思い出すような体験をしましたので、報告します。
最初から、学習挫折の話しです。
テキスト「ジオパークについて」について一通り読んでみました。私にとって興味ある話題満載です。
実は私は地理学科出身ですので、「2プラトンの『コーラ』について」に出てくる「オギュスタン・ベルクというすばらしい地理学者がいる」、「風土学の領野を開拓し、画期的な独自の理論を構築した人である。この人の最近の著書に「風土学序説」(2002年1月、筑摩書房)というのがあって、…」という文章に着目しました。自分の興味や専門に近いところから学習すれば糸口が広がるのではないかと思ったわけです。風景については多少かじったことがあるので、ここら辺から地域づくりの哲学・思想の世界に船出しようと思ったわけです。
まず、「風土学序説」を入手しようとしました。絶版でした。WEBの古書販売サイトをみました。人気があり品薄のようです。いくら探しても定価3800円の本が2万円近くします。香港から取り寄せるというサイトがあり1万円弱でした。海外取り寄せのリスクがわからないので、決断できません。そこで千葉市図書館のWEBサイトをみると、最寄の図書館まで簡単に取り寄せできることがわかりました。スムーズに取り寄せることができました。(2011年4月6日、この文章を書きながら、再度WEB古書販売サイトを検索したところ4500円で出品されていて、早速入手続きをしました。良かった。)
オギュスタン・ベルク著「風土学序説」(2002年1月、筑摩書房)
「風土学序説」を手にして、早速読み出しました。岩井先生の文章以上の情報は事前に持ち合わせていませんでした。
全く理解できないのです。日本語ですから、音読はできます。しかし、意味が100%判らないのです。普通は、難しいなりに、自分にとって役立ちそうなものであるかどうかとか、著者の言いたいことの雰囲気とか、レベルとか何らかの情報を引き出せます。そういうことが出来なければ、これまで社会人として来れなかったと思います。
ところが、この本は歯が立ちませんでした。だんだん腹が立ってきました。
意気軒昂に学習し出した途端に挫折です。
哲学そのものの知識が自分に大いに不足していたようです。
幸い、巻末人名索引で今西錦司を見つけそのページをめくると、なんとなく著者が言いたいことはわかりました。今西錦司全集は以前熱中して全部読んだことがあります。このことから、背景知識量を増やせば、ある程度までは理解できるのではないかと察知できました。
わたしは、人生の大半を技術分野の仕事に従事してきており、哲学や思想、あるいはその背景となる歴史・文化についての素養の貧弱さを痛感させられる結果になったのです。
この本が余りにも痛快に判らなかったので、捨て身になってこの本を判るようになりたいと思うようになりました。
その時、これが私にとっての、河合隼雄のいう「入社式」だったんだと思い出したわけです。
ブログの最初のコンテンツが学習の挫折ではどうしようもありませんが、ご容赦願います。
これから、この1件をバネにして、「ジオパークについて」をテキストに、地域づくりの哲学や思想について学習していきたいと思います。
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