中沢新一著「人類最古の哲学」(講談社、2002)
学習の寄り道になってしまうのですが、中沢新一のカイエ・ソバージュというシリーズを通して読んでみます。全体を通して、「古代社会において人類が開発した思考方法(「モノとの同盟」、「対称性思考」などのキーワードに関連する思考方法)が、現代社会改善のために、再発見・再活用する意義があるのか?」という視点から読んでみます。
最初は「人類最古の哲学 カイエ・ソバージュⅠ」を読みました。
1 諸元
著者:中沢新一
書名:人類最古の哲学 カイエ・ソバージュⅠ
発行:講談社
発行年:2002年1月10日
体裁:単行本(18.7×12.5×1.2cm)216ページ
ISBN-13:978-4062582315
2 目次
はじめに
序 章 はじまりの哲学
第一章 人類的分布をする神話の謎
第二章 神話論理の好物
第三章 神話としてのシンデレラ
第四章 原シンデレラのほうへ
第五章 中国のシンデレラ
第六章 シンデレラに抗するシンデラレ
第七章 片方の靴の謎
終 章 神話と現実
索 引
3 「はじめに」抜粋
「さてCahier Sauvageの一冊目では、神話が主題となる。いずれのタイプの形而上学革命も起こる以前、とりわけ国家や一神教が発生する以前の人類は(旧石器時代の後期から)、この神話という様式を用いて、宇宙の中における自分たちの位置や、自然の秩序や人生の意味などについて、深い哲学的思考をおこなってきたのである。神話はのちの宗教とはちがって、どんなに幻想的なシチュエーションを思い描いているときにも、現実世界への強烈な関心とその世界を知的に理解したいという欲求を、失うことがない。現実の世界を犠牲にしてまで、観念や幻想の世界に没頭しようという非現実性に陥ることが、神話にはけっしてなかったのである。」
4 感想
●神話が宗教とは違い、現実との関係を保持しながら、(現代において哲学といわれる)思考内容を含んだものであるということが、説得力ある事例で理解することができました。神話が最初の哲学であるとの表現が理解できました。
●神話が「感覚の論理」を使って複雑な思考を、感覚的対立に置き換えて直感できるようにしているという説明は、貴重な知識であると感じました。
●旧石器時代から新石器時代に移行する時期にユーラシアにおいて広く均質な神話が共有され、その核となるようなものの断片が、現在世界各地の神話に残っているという発想は、雄大な発想であり、精度はべつとして、ロマンと魅力に満ちたものです。
●シンデレラの話が汎世界的なものであるということは、以前南方熊楠の本などで接したことがありました。しかし、シンデレラの話を石器時代の死者と生者の間を取り持つシャーマンの話にまで結びつける中沢新一の学習発想力に強く感心しました。シンデレラが落としたガラスの靴にそのような意味があると初めて知りました。
●ケルト、ポルトガル、トルコ、中国のシンデレラ、あるいはベニテングダケの話など、知識としては興味津々でした。
●私は以上のような知識が「現代人類社会を救世する思考」と関連付けられることを期待してよんだのですが、その点では少し期待はずれでした。神話の内容を深く知ることが、アニメ製作などバーチャル面の創造世界に大切であるという例は話されているのですが…。私の期待感があまりに大きすぎたのかもしれません。
●このシリーズは全部読んでみたくなりました。
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